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「アナログとデジタルの使い分け」

2012年5月7日  ピアノ 石井 千恵子

想像力の高め方
少し深く考えさせられる本に出会いました。
NHKでも紹介された、実業之日本社さんから出版されている「脳を創る読書」という本です。
この本ではなぜ「紙の本が必要なのか・・・」というテーマで脳科学の視点から「考える」ためのツールを検証してくれています。
そして、音楽家であるなら鍛錬すべき「想像力の高め方」を提言してくれています。
興味深かったのは脳に入力される情報量は、
活字 < 音声 < 映像
で増えていきますが、
想像力で補わなければいけないのは、これと逆で
活字 > 音声 > 映像
となるそうです。
また、脳から出力される情報量は、
メール < 手紙 < 電話 < 会話
になるそうです。
そして、脳の想像力を十分に生かすためにはできるだけ少ない入力と豊富な出力を心がけると良いそうです。
つまり、読書と会話を楽しむことが創造的な能力を活用する最善の方法なのでそうです。
そういえば、スピリチュア的な視点からも他の方とのエナジーの交感は会話をしないと生まれないと聞いたことがあります。

行間を読む
また、この本の中では音楽は疑いなく言語の延長線上にあり
楽譜の「行間を読む」だけの想像力があれば作曲者が表現したかった作意や真意をくみ取れるに違いないと言っています。
以前、今は亡き恩師でもあるジャズピアニストの飯吉馨先生に「1の次は2ではないんだよ。1と2の間には1.1や1.11…があってそれを感じられなくては、音楽家としては失格だよ」とよく言われました。
この1から2という感覚はデジタルで1.1や1.11はアナログ的なことと説明してくれたのだと思います。
また「音のなっていない部分が音楽として大切なんだから、休符や楽譜に書いてない音を感じなさい」と叱られたこともあります。
今はその意味が少し理解できますが、その当時の私の頭の中は???だらけでした。

想像力とロングトーン
また、著者は直線や円を描くには確かな想像力が必要であると言っています。
知り合いの画家の方に「絵を鑑賞する時、私たち素人は感覚や好みで評価しますが、まずどこから見ますか?」と訊ねた所「線(ライン)からです。」と答えられました。 明らかに名画はラインが違うのだそうです。
絵については知識がないので分かりませんが・・・確かに、子供の描く絵のラインは真似できないなぁと思いました。
そうすると、この本でも触れている様に音楽で「ロングトーン」を美しく吹くには想像力が必要なのです。(もちろんテクニックも必要ですが)
ならば、同じピアノで同じ音を弾いても人によって違う音がでるのは想像力が大きく影響するのでしょうか・・・?!
前述した飯吉先生のレッスンで、一度だけ先生がとても古いスタンウェイのピアノを指一本で「DOLCEの音ね。」※1と弾いてくれたことがありました。
その音があまりにも美しかったので、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえたことがあります。
先生が席をはずした時に「私も!!」と同じピアノで何度も何度も一つの音を弾いてチャレンジしましたが、どうしても先生の音色のようにはゆきません。
いじけている私に先生は微笑みながら「君はいつかきっと奏でられるようになるよ。」と慰めてくれました。
それ以来あちこちで古いスタンウェイのピアノをみつけては、ときめきを求めて一つの音を探りながら弾いていますが、未だあの時の音色には出会えません。

想像力
この本によって、音楽家にとって想像力がとても大切であることを再確認し音楽を勉強しているからこそアナログをデジタルの使い分けを深く考えて 生活をしてゆかなければと思いました。
情報を多く必要とする以外は、できるだけ紙のものから得るようにしよう。
明日から本は今の倍、読むようにしよう。
なるべく、人と会話を面倒くさがらず積極的に行って。
なるべく、なるべく電話番号はメモリーを使わず番号をタッチしてゆこうかな・・・

1と2の間の1.11とか1.1111が感じられ表現できる様に・・・
いつか、あの時のDOLCEの音が奏でられるように・・・
さしあたり、日々のテーマは「想像力」となりそうです。

※1 音楽用語でDOLCEは甘美な。優美な。やわらかな。